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地球放浪

February 12, 2008

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長いような、あっという間のようなこの2年間は、今思えば、俺が新しい道へ踏み出すための準備期間だったようだ。

24で大学を卒業して以来、月の半分近くを編集部の机や床で寝るような日々を10年以上過ごした俺は、あきらかに重度のワーカホリックで、でも40が近づくにつれてそんな暮らしを苦痛に感じるようになってきた。

その理由は、徹夜の疲れが尾を引く、つまり体力の衰えということも無論あるのだけれど、それ以上に「飽きた」という意味が大きい。

ホットバイクという雑誌を作ること。

オートバイを走らせて、それについて何かを書くことに。

もちろんオートバイは大好きだ。これについてはいささかの迷いもない。

しかし今はもう、昔のようにいろんなバイクに昂ぶることはあまりない。COOLなバイクや美しいバイクはたくさんあるけれど、今の俺は、自分のチョッパーがあれば、ほかには何も欲しくない。

自分のやりたいこと、カッコいいと感じるもの、見てみたいこと、乗ってみたい走らせてみたいと思うものばかりを記事にしてきたイケダシンという編集人にとって、自分のバイクがあれば100%満足、という情況は致命傷だ。やってみたい=企画であって、それゆえこの「やってみたい」欲望が薄れてしまうと、企画を会議で考え始めたり、何をやれば売れるかというような方向を模索し始めたりして、でもそれは俺の道じゃないことを、俺はよく知っていて。

自分が心底入れ込んできたことに、自分が飽きていることに気づくこと。これは寂しいことである。

しかし、飽きたということは同時に、あたらしい舞台で何かをやりたいという欲求でもある。

そうして俺は、編集長を辞めた。

HBJ編集長を辞したのは

2005年の末だから、昨年末で2年が経過したことになる。

編集長を辞めるということは職を失うという意味でもあり、どうやって食って行くかという大問題に直面せざるをえない。

幸いしばらく編集顧問という名目で何がしか金をもらって、あとは原稿料で食いつないでいたものの、1年で突然顧問料は打ち切られ、昨年一年、我が家の家計はかなり切迫した状況だった。

そういえばいつだったか、友達が言っていたっけ。

「あるところで、イケダさん編集長やめて何やって食ってるんだろうみたいな話になって、貯金ゼロとか言いながら実はけっこう金貯めてたらしい、みたいなウワサがあるらしいですよ」

へえ。どーでもいーけどまったく貯金はない。上限ぎりぎりまでキャッシングしたカードローンの支払いで途方に暮れ、貯金ゼロの身の上を幾度恨めしく思ったことか。

前著イエローイーグルに続き、昨年末に新しい「旅学」を出した。

オートバイで旅に目覚め、世界に目覚め、日本に目覚め、自分に目覚めた俺にとって、旅学は新しい舞台である。

チベットの天空の城、ネパールの山岳地方、月の砂漠を行くらくだのキャラバン、モンゴルの大平原で暮らす小さな家族、スペインアンダルシアのひまわり街道、妻とふたりキャンピングカーで北米大陸放浪、知床半島の春、富士山に南アルプス……

行ってみたい、見てみたい。世界中を見てみたい。この気持ちは、かつていろんなバイクに乗ってみたくてわくわくしていたあの頃の気持ちとおんなじで、そういうテンションでものを作っているときこそ俺は良いものを作るのだ。マーケティングでものを作るのは下手くそだけど、これだけは自信がある。

モーターヘッドもこれと同様。映像という新しいチャレンジはエキサイティングだから、作っていて楽しい。ちょっと忙しくてなかなか進行しませんが。

正月3日から13日までセネガル。そして31日からブラジルのカーニバルへ。2/6、帰国。

成田からドイツを経由しサンパウロでブラジル入国、さらに国内便でバイーヤ州のサルバドールという古い街へ。空港の乗り継ぎ待ち時間を含め、到着まで計40時間! (自宅からナリタまでを含めれば)ほぼ二日がかりでたどり着いたブラジル。間違いなく人生最長の旅だった。ふう。

新しい本の企画の旅だ。

EXILEのUSA=ウサというダンサーが、世界各国をダンスしながら旅をするという本とDVD「ダンス・アース」を俺が作ることになり、カメラとビデオを撮影しながら二人で旅している。

セネガルでは「サバール」というパーカッションの強烈なビートのアフリカンダンス。そしてブラジルはサンバ・カーニバル。これらについて詳しい話はおいおい書いていくとして、アフリカンブラックとアフロブラジリア、とにかくどちらも底抜けにハッピーな体験だった。

そして帰路は35時間。さすがにちょっと閉口したけど、でもそんなことはどーだっていいんだ。

世界をさすらうこと。

そこで撮った写真や動画、それについて書いた文章が世の中の少なからぬ人たちに広がっていく歓び。

それらに較べれば、12時間飛行機に乗って空港で9時間待って次の飛行機は13時間、そんなの大したことじゃない。

来月はダンス・アースの次なる旅、タイへ。

4月末にはインドのバラナシという町へ行き、そのまま5月中旬にインドからネパールを越えてチベットまでバイクで走ってみようと思っている。ちょっとした冒険、日本に戻るのは6月中旬だろうか。

バイクはエンフィールド。4スト単気筒のシーラカンスみたいなヤツで、どうやら新車が1700ドルで買えるらしいし。

オートバイが仕事であるように、2年の充電期間(リハビリ期間?)を経て、旅が仕事になった。

好きなことは、楽しい。

人生というこの旅を、徹底的に楽しく歩いてやるゼ。

断崖絶壁を、花咲く野原を行くように。

地球放浪の年、すべては偶然の思し召すままに。

Dsc00119_4

CARNAVAL@salvador,Brasil

Comments

地球放浪

+ Posted by: kiyoshi | Aug 10, 2008 12:03:45 PM

池ちゃん。
HBJお疲れ様でした。今の日本のハーレースタイルの原型を生んだのは池ちゃんだと思います。各メディアやマーケットに活路を与えた功績も偉大です。子供の頃から”提出物”が苦手だったボクから観た貴方の仕事量は地獄の様でした。その原動力が”ヤラセられる”事でなく”ヤリたいから”なのかのと時折り思い出します。
きっと新しい分野でも大きな功績を残されるでしょう。

PS.小さなスペースと工具は有るので気が向いたら使って下さい。

地球放浪

+ Posted by: イケダシン | Mar 12, 2008 8:37:49 PM

kazmaへ

ありがとう。照れくさいけどほんとにうれしいよ。
今年は世界放浪の年。
世界で心を震わせて、それをいろんな形でみんなに伝えていこうと思う。
さあ、旅をしようぜ。

地球放浪

+ Posted by: kazma | Feb 17, 2008 9:33:15 PM

Dear 池田さん

池田さんをリスペクトするハーレー乗りの kazmaです。

最新号のホットバイクを読んでセツナクなってしまいました。

ホットバイクの池田さんのコラムを一番の楽しみにしていました。
今年33の自分ですがホットバイクは20代前半から愛読させていただいています。
中でもシンズコラムは、人生の成長期に読む事ができて池田さんの考え方をとても参考にさせていただきました。

池田さんの考え方を学ぶ以前の自分は、有っても無くてもいいような物を手に入れる為に無駄に働いて自由にできる時間をお金にしていました。

オートバイで走る楽しさや旅することで得られるお金じゃない豊かさにきずかせていただいたのわ池田さんのコラムを読んだからだと思っています。

仕事の休憩時間や旅先でのテントの中や食道でまたは温泉につかりながら「路上へ」を読んで心を震わせています

野球少年が松井やイチローに憧れるように自分はあなたに憧れています。

自分も2児の父ではありますが、可能な限りに家族で時に独りで旅をしていきたいと思っています。

これからも、応援しています。いつまでも、トムソーヤのハートでいい旅を続けてください。

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