電話が鳴った。
旅学人ハヤシヨシキの妻、カンちゃんからだった。
「もしもし、今御殿場なの。今日は家にいる?」
それから程なく、ふたりがやってきた。赤いユーノスで。
聞けばヤフオクで8万円なり。
でも夏のような太陽に照らされたユーノスは、とても素敵な乗り物に見えた。
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どうやらFLHを持って帰るのが目的らしい。
足掛け8年ほどで世界一周を果たしたFLHを、HBJGONZと連れ立って横浜港に取りに行ったのは、もう1年ほど前のことだ。
以来そいつはウチの軒下に陣取って、訪れた人たちに好奇のまなざしを向けられつつ、1ミリたりとも動いておらず。
持って帰ると言うのはつまり、乗って帰るという意味だ。
えっっ、マジで?
ハヤシに言わせれば、「インドから中国抜けて走るつもりでいたから、整備はしてある」
……とは言えね。その姿はインドの乞食僧なみですから。
これがまさか走る物体だとは、よもや誰も思うまい。俺も然り。
でもハヤシの意志はカタい。
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じゃあとりあえずエンジンかけてみようじゃないか!
で、バッテリーをつないでガソリン入れて、セルボタンを……
(以下ショートムービー。clickしてみましょう)
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うーん、セルボタンを押すとかすかに「カチン」と音がするだけで、まったく反応ナシ。
ユーノスのバッテリーからジャンプするも変わらず。
ならば、と最後の手段。
我が家の横は長い下り坂になっていて、押しがけ(下りがけ?)はたやすいワケで。
これまでも何度かこの坂にお世話んなってるオイラがトライした。
惰性で坂を下り、スピードがついたあたりでミッションを2速に入れ、立ち上がってドスンと腰を落とした瞬間にクラッチをミート。すすすすると!
(以下ショートムービーその2)
なんと数回のクランキングを経て、バババババンッ、といともたやすくエンジンに火が入った。
えっ、マジで?
ハヤシは「当然だよ」と言わんばかりの笑顔を浮かべ。
そっか、そーだよな。コイツで地球を一周したんだからな。
にしてもさ、ハーレーダビッドソンってほんとに凄いバイクだ。カブだって(最近のは特に作りが粗悪だから)1年ほっぽらかしたらまずエンジンかからないし。世界で一番強いオートバイ。これはもう、まちがいない。
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そういえば昼飯がまだだった、と近くに開店したばかりの回る寿司屋で腹ごしらえ。家に戻ってコーヒー入れて。
かくして滞在わずか数時間、ハヤシとカンちゃんはふたたび道行く人となったのでありました。
仮ナンバーの王様は、はたして今頃どこを走っているんだろか。
いや、もうどっかでテントを張って爆睡だろうな。
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あぁ、俺たち旅学人の未来に幸多からんことを!